居宅介護支援の黒字化は難しい?経営実態から理由を探る

2021年度の決算で、居宅介護支援が初めて黒字化したことがわかりました。

すべての事業所で黒字になったわけではありませんが、調査の結果収支差がプラスとなりました。

しかし、居宅介護支援はほかのサービスと比べても特に赤字が続き、収支差がマイナス傾向にあるようです。

これはいったいなぜなのでしょうか?

居宅介護支援の黒字化を目指し、経営実態から赤字になる理由を解説したうえで黒字化のためにできる手段をご紹介します。

居宅介護支援の経営実態

2023年2月1日、厚生労働省により社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会が開催され、2022年度の介護事業経営概況調査結果が報告されました。

この調査はすべての介護保険サービスを対象に行われており、介護保険施設・居宅サービス事業所・地域密着型サービス事業所の経営実態がわかります。

そこで、2020年度と2022年度の資料から居宅介護支援の経営実態について分析してみました。

分析した結果から、収支差率の推移・給与費の割合・規模と収支差率について解説します。

 収支差率の推移

まず、収支差率についてです。

収支差率は、収入のうちどれだけの利益が出たかを表す数字であり、次の式で計算されます。

【収支差率の計算方法】

(収入-費用)/収入×100%=収支差率

2017年度決算から2021年度決算において、居宅介護支援での収支率は以下の通りです。

2019年度の決算までマイナスでしたが、2020年度と2021年度の決算においてはプラスとなっているため、平均的に黒字化できているといえるでしょう。

年度収支差率 (税引き後)
2017年度決算-0.2% (-0.4%)
2018年度決算-0.1% (-0.4%)
2019年度決算-1.6% (-1.9%)
2020年度決算2.5% (1.8%)
2021年度決算4.0% (3.1%)
出典:厚生労働省「令和2年度介護事業経営実態調査結果の概要」「令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要(案)」

給与費の割合

次は、給与費の割合です。

給与費の割合とはその名の通り介護スタッフへの給料の割合のことで、収入のうちどのくらいの割合が給与に充てられているのかがわかります。

人件費は従業員に支払う費用全般を指すため、給与費の割合を知ることは「人件費がどれだけかかっているか」を知れます。

居宅介護支援の給与費の割合の推移は、以下の通りです。 2019年までは83%以上となっていますが、2020年度と2021年度はほぼ80%を切る結果となっています。

年度給与費の割合
2017年度決算83.7%
2018年度決算83.4%
2019年度決算83.6%
2020年度決算新型コロナ補助金あり:79.6% 新型コロナ補助金なし:80.1%
2021年度決算新型コロナ補助金あり:78.1% 新型コロナ補助金なし:78.3%

ここで疑問となるのが、先ほど解説した収支差率と給与費の割合の関係です。

収支差率が上がり給与費の割合が下がっていると、スタッフの給料が削られて事業所の利益になっているような想像をするかもしれません。

しかし、これは利用者1人当たりの収入が増えているからだと考えられます。

2019年度の決算では12,021円、2021年度の決算で12,747円と増えていることを考慮すればスタッフの給料は据え置きのままであると考えるのが妥当でしょう。

規模と収支差率

最後に注目したいのが、規模と収支差率についてです。

以下のグラフを見てください。

これは、令和2年度介護事業経営実態調査結果を参考に作成したものです。

グラフを見ると、規模が大きい事業所は収支がプラス傾向にあり、規模の小さな事業所では収支差率がマイナス傾向であることがわかります。

つまり、規模の小さい事業所ほど黒字化は難しくなるということです。

先ほどご紹介した収支差率の推移をみれば、居宅介護支援が黒字化できているように見えるかもしれません。

しかしこのグラフを見ると、赤字で苦しんでいる小規模の事業所は多いと考えられるでしょう。

小規模の居宅介護支援事業所を黒字化させるには?

大規模の居宅介護支援事業所の収支差率がプラス傾向にある理由は、同一法人内でほかの施設と併設し、包括的なサービスを提供していることがよくあるからです。

つまり居宅介護支援は単独での黒字化は難しいため、グループ内のほかの施設の力を借りることが黒字化のカギとなりそうです。

しかし、小規模の居宅介護支援事業所ではそうはいきません。

社内でほかの介護サービスを展開していないとすれば、単独で黒字化するしかないでしょう。

この場合できることは、「業務の効率化」と「特定事業所加算の取得」です。

業務を効率化してムリ・ムダ・ムラをなくし、特定事業所加算を取得して収入を増やせば黒字化を目指せます。

業務を効率化する

1つ目の方法は、業務の効率化です。

ペーパーレス化やデータの一元管理、外部サービスの活用、利用者の生活スペースと導線の見直しなどがあります。

ペーパーレス化とデータの一元管理をしたいのであれば、介護ソフトの導入がおすすめです。

2023年4月から本稼働するケアプランデータ連携システムにも介護ソフトが必要なため、早めに導入してもよいでしょう。

また、業務の効率化は介護スタッフの満足度に繋がり、離職防止にもなります。

離職率が下がると人材確保に必要な経費が削減できるため、長期的に見れば黒字化への第一歩です。

離職防止と業務改善について具体的な方法が知りたい方は、介護ヘルパー不足の対策は離職防止と業務改善がカギ!具体策と実例をご覧ください。

特定事業所加算を取得する

特定事業所加算とは、質の高いサービスを提供している事業所を評価する制度であり、取得すると算定単位数が加算されます。

種類により適用要件と加算される単位数が異なりますが、取得すれば加算を得られます。

特定事業所加算を取得する適用要件と種類・加算単位などは、厚生労働省のホームページに記載されているため、気になる方はチェックしてください。

なお、介護報酬には「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」などもありますが、居宅介護支援は対象外です。

まとめ

居宅介護支援の経営実態を読み解き、小規模の居宅介護支援事業所を黒字化させるには何ができるのかを解説しました。

2022年度の介護事業経営概況調査結果を見れば、居宅介護支援は黒字化しているよう思うかもしれません。

しかし、小規模になるほど収支差がマイナスになることを考えれば、まだまだ黒字化できていない事業所も多いでしょう。

小規模の居宅介護支援事業所が黒字化するには、業務の効率化と特定事業所加算を取得する方法があります。

ムダをなくして加算を取得すれば、黒字化までの道筋が見えてくるはずです。

「業務の効率化といってもどこから手を付ければよいのかわからない」

「特定事業所加算の取得には手間がかかりそう」

このような不安があれば、介護コンサルティングのやさしい手までご相談ください。

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